甘い魔法②―先生とあたしの恋―


和馬の事はともかく。

啓太との事に関しては、敏感に反応するから。


そう思って口ごもったあたしに、先生が笑う。


「分かってるよ。別に名前の呼び方なんか関係ねぇし」

「でも気にしてるんでしょ?」

「別に。……でもなんか負けてる気がして気に入らねぇだけ」


不貞腐れて言う先生に、思わず笑みが零れる。

子供みたいな理由を嬉しく思いながら、まだ顔をしかめてる先生に笑いかけた。


「さて。早く行くよ。……矢野」

「あー……なんかすっげぇ振り出しに戻った気分」

「懐かしいよね。『矢野』って呼んでた時期が」



苦笑いを浮かべる先生の隣を歩きながら、新しい景色に目を向ける。

先生にとって、すごく大切な場所。


今から向かう場所に緊張を覚える胸を落ち着かせるために、周りばかりを眺めてた。




< 26 / 458 >

この作品をシェア

pagetop