甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「来んなって言っただろ? 第一、ここは俺だけの家じゃねぇんだから、来るなら部屋に来い」

「え……ってか、その子が市川さん……?」


坂口先生の視線が、先生の後ろにいたあたしに向けられる。

驚きにも興味にもとれる視線を受けて、あたしはぺこりと頭を下げた。


「三年の市川実姫です。

ちょっと……家の事情で、一年前からここに住んでます」


あたしの自己紹介に、坂口先生は一瞬言葉を失った。

あまりの驚きようだったから、それは先生も不思議に思ったみたいだった。


まさか生徒が住んでるなんて思わなかったのかな、なんて思っていると、ようやく時間を取り戻した坂口先生が、張り付いたような笑顔で笑う。


「あ、そうなんだ……。

ごめんごめん。昨日、ハル兄から話は聞いてたけど……なんか実際自分の目で見ると、動揺する。

……ハル兄、おいしい生活送ってんね」

「バカな事言ってんな。色々大変な事もあるし、おいしいだけじゃねぇよ」

「おいしい事は認めてんじゃん」


さっきから、おいしいおいしいって。

会話の内容があたしを指してるみたいに思えてしまって、なんとなく恥ずかしくなる。




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