鳥籠

第三節

昨夜のオトコも、名前を思い出せなかった。

近頃、おかしな位に忘れっぽい。
忘れっぽいというより、記憶喪失。

「若年性痴呆症? ってヤツ?なんてね」

呟いて、くすっと笑ってみる。
笑うしかないじゃん。

名前を聞く機会がなきゃ、まず思い出せないなんて。

顔だけは何となく思い出せるけど、でも、大体同じに思えてしまう。

「なに頭抱えてんの?」

リハーサル室なんかで、しゃがんで頭を抱えてるあたしに、シュンが声をかける。
プレイの面でもそうだけど、シュンはあたしの様子には目ざとい。
友達って言うよりは、保護者みたいだ。
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