鳥籠
「あたし、きゅーけーい♪ ちょっと走って来るねっ」

柚莉はそう宣言すると、タオルをつかんでリハーサル室から出て行ってしまった。

「お前、ケガすっぞ」

シュンもあたしの隣にしゃがんで、血が止まりかけた指に絡み付いている弦を解く。
手をシュンに預けたまま、あたしは呟く。

「弦、切れちゃったねぇ」
「あ、ないの? もしかして」

シュンはあたしのギターケースのポケットを、勝手に探る。
そこにしまってあった弦のパッケージはいくつかあった。
そのラベルを順に見て、目当ての弦を探してくれる。

「なんだ、あるんじゃん」

それをあたしに見せてくれるけど、あたしは力なく首を振る。

「ないよ」
「あるって、これ」
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