鳥籠
「あ、そう」

うまく騙されてくれたのかな。
それとも。

「付き合ってんの?」
「別に、ってば」

付き合う、って何だろう。
あたしにとっては、ものすごくあやふやな言葉。
周りから「付き合ってる」と言われたって、あたしから見たら、特別な状態じゃないことの方が多い。

シュンはあたしの肩を抱き寄せて、頬に軽くキスをする。
されるがままに、体を預け、瞳を閉じた。

今、あたしにはシュンしか残ってない。
正体がわからなかったオトコの携帯番号もメアドも、順番に削除した。

余分なものがない心地よさ。
削除して、すっきりしたアドレス帳の画面を眺めると、それを感じた。
軽くて、楽じゃない?
広々してるよ。
もう、あいつらは必要ないんだ。

< 58 / 140 >

この作品をシェア

pagetop