鳥籠

第二節

うとうとと、心地よい暖かさの中でまどろむ。

かぎ慣れたコロンの匂い。
肩を抱きしめている腕の感触。
どれも、あたしの肌になじみ切ったもの。

それでも、はっきりしない。
あたしをこうして包み込んでいるこのオトコの名前。

誰だったっけな。

思いつく名前を端から並べてみたけれど、どれも当てはまらない気がする。
でも、顔を上げてしっかり見て確認するのも面倒くさい。

ここは、居心地がいい。

別にかまわない。
これが誰だって。
あたしが、すきなように振舞える場所だから。

首筋に顔をうずめて、匂いをかぐ。
犬みたいに、くんくんと。
かぎなれた匂い、と思ったけど、そうでもないような気もしてきた。
どっちにしたって知ってる匂い。

何でもいいや。
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