他校の君。【完】



「香澄」

「うん?」

「今なんつった?」

「へ?」


今?首を傾げてから、今さっき言った事を言葉にしてみる。


「『や、それもあるけど』」


(あ、『確かに』を入れるのを忘れちゃった)


間違っちゃった、と言おうとすると、


「もっ回言って」


と言われた。

え?も、もう一回?


「『や、確かにそれもあるけど』?」


今度こそちゃんと言うと、


「香澄は俺の事好き?」


そんな事を聞かれた。

そ、そりゃあ好きに決まってるよ。

だから一臣君に安心するし、一臣君にドキドキするし、一臣君に照れちゃうし。


「す、好き…だよ?」


かかぁ、とまた赤くなりながら言うと、一臣君が何故か嬉しそうに笑った。


「初めて聞いた」

「…初めて?」

「そ。初めて香澄から『好き』って聞いた」


え、あれ?今まで一回も言ってなかったっけ?

そりゃあ、照れちゃって言えない事も何度もあったけど…。


「あ、あれ?」


あたし、一度も言ってなかった?


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