君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜
牛車が着いた先は手入れの行き届いた、景観の麗しい屋敷だった。

すでに宴は始まっていて、老若男女の酒の入った笑い声が響く。

広間と庭にまたがる宴席をゆかりは気にせずズンズンと突っ切り、
それを追ってマーナオが通ると、銘々に散っている人々がチラチラ見ながら小声で何事か囁き合う。

不躾に浴びせられる品定めのような視線。

御披露目の席というのがよく分かる。


庭をも見渡せる室内の上手にゆかりは真っ直ぐ進む。
そして、そこに座る壮年の男性の前に畏まった。
「高月 ゆかり。到着いたしました」

男性は頷くと、
「それが手に入れた魔性か」
「マーナオといいます」
ゆかりが応え、
「ほう。大陸のモノか」
男性は間髪入れずに看破した。
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