一枚の壁








私はハンスに抱きしめられていた。
















『俺は軍人だよ。

それもクリスティーナの親父さんが一番嫌いなナチス・ドイツの…

それでもか?』





「うん」















『いつかお前を残して…

死ぬかもしれない。



それでも俺を愛してくれるのか?』



「うん」









『絶えず死の恐怖に怯えているような、弱い人間だけど…

いいのか?』







「初恋だもの…

どんなハンスでも、ハンスでしょう?」




『そうだね。
俺は何を失っても、大切な者を守りたいって思ったから、軍人になった。



だけど…

いつからか、


クリスティーナに会えなくなる事が怖くなったんだ』







「私は、
ハンスお兄ちゃん…

いや、ハンスが好きだから……



ハンスの特別な人になりたかった。








ハンスが何も告げずに兵学校に入った時は、どんなに寂しかったか!

だけど、好きだから寂しいのか…

お兄ちゃんがいなくなって寂しいのか、わからなかったの。」










『そっか。

振られたらどうしようってずっと思ってたよ』







「私はハンスを振ったりしないわ」




『さぁ?

どうだか』





「もう!
すぐにバカにするんだから(笑)」






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