一枚の壁









『フリッツ・フォン・ゲートハルト大佐です。


ハンスは、とても優秀で、私も期待しています。

こんなに可愛いらしい婚約者がいたとは…

ハンス、婚約者殿を大切に』










『はっ!』









「ありがとうございます。
ゲートハルト大佐殿」








『私が奪いたいほど、貴方は可愛いらしい…』








『大佐!!
いくら貴方でもクリスティーナをそのような眼で見ないで頂きたい』







『クリスティーナ殿、ハンスが怖いので失礼します。』







「はい。
ハンスをよろしくお願い致します」











『わかっております』













私は深く頭を下げた。



ゲートハルト大佐は、格好いい方でした。














しばらくして…








「ハンス、
ゲートハルト大佐は素敵な方ね」








『ゲートハルト大佐は、ああ見えてドイツでも有数の貴族の御曹司なんだ。


だが、すごい女たらしで…
会うたびに違う女性を連れているよ。


確かに、金髪碧眼…
ヒトラー総統閣下のおっしゃるアーリア人の条件にぴったりの格好いい人だから。


女性には困らないだろうな』











「もし…
ハンスが、戦場で一人で寂しかったら…
私以外の人に目を向ける?」









『向けないよ。

クリスティーナ、安心して。



不安なら、神に誓おうか?』







「ううん。


いい。



ハンスを信じてる」








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