煌めく青春を取り戻す、君と──
私は学校に行けなくなった。今日は頑張ろうと思い、駅まで行くのだが……電車を待っている間に過呼吸を起こしたり、吐き気を催してしまい、そのまま帰宅する日々が続いて、保健室登校さえも出来なくなった。

担任の先生は男性だった為に話すのが怖くて拒否をした。家族以外の人では唯一、保健室の湯沢先生とは話をする事が出来た。

部屋からも出れなくなった私に手を差し伸べたのは、厳格な父だった。

引きこもり気味な私に今流行りの漫画を全巻買ってきてくれたのだった。漫画は小学生の時に取り上げられて以来、読んだ事がなく夢中で読んだ。

漫画って、やっぱり面白いんだ。

小学生の頃、漫画を取り上げられた原因は、夢中になり過ぎて勉強をおそろかにして中学受験に失敗したからだった。

初めてお小遣いで揃えた、その頃の流行りの漫画だった。漫画を見ながら模写をするのも好きだった。漫画を読んで絵を書いたりしていたから、「勉強の妨げになる」と言って取り上げられたのだ。

それなのに、現在は当時読んでいた漫画も全巻買ってきてくれたのだった。いつの間にか完結していた大好きな漫画は相変わらず面白かった。

冒険という壮大な世界。

以前の感情を思い出し、ノートに絵を殴り書きした。物語を箇条書きして、キャラクターを作ったりしていた。

「ミヒロ……、母さんとも話し合ったんだが、父さんは厳しくし過ぎたようだ。自分の好きな事をしなさい」

しばらく日数が経過して、父が私の部屋の扉の前でそう呟いた。それからは漫画の道具を揃えて描いてみることにした。案外、素質があったらしく、漫画賞に応募したら二回目にして新人賞を頂けた。

私はそのまま、高校を辞めたのだった……。
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