(短編)フォンダンショコラ
再会したあの日から、もう1週間が経とうとしていた。それからのあたしの時間は、前と変わることなく、正常に動いている。
変わったことといえば、何をしてても、どこにいても、彼の姿を思い浮かべてしまうことくらいだ。
と同時に、彼と一緒にいた日々のことまで鮮明に思い出すからタチが悪い。

一刻も早く、断ち切らなければ。

そんな焦りが強くなればなるほど、あたしはドツボにはまっていっているようだった。


そんな中で幸いなことといえば、仕事が忙しいことだった。

あたしが働いている飲食店は、国内では結構名高いイタリアンレストランだ。

まるで高級ホテルの中にあるような、格式の高いサービスや、豪華な内装だが、値段がリーズナブルなことで、お金を持っているお客様から比較的一般的なお客様まで、様々な方がご来店下さっている。

うちのレストランでは、季節やイベントごとに内装や、コース内容、デザートや、置いているワインや、スペシャルメニューが変わってくるから、それもひとつの魅力だ。


そして、今はまさに、バレンタインフェアの真っ最中だった。

カップルでご来店下さった方にはシャンパンをプレゼント、さらにはバレンタインのスペシャルコースの最後に好きなチョコレートスイーツをプレゼント、というものだった。

内装も、この時期だけは様々な色のハート型で彩られ、花も薔薇が置いてあったりと、たった2週間だけのフェアにしては、結構手が混んでいる。


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