(短編)フォンダンショコラ
「授業とかよく被っててさ、桜はうるさいだろ?だから反射的に目が行って・・、んでその隣で、いつも桜の話を笑いながら聞いてる彩美に、気が付いたら目がいくようになって・・。」

初めて聞く、出会うまでの経緯。今までに味わったことのないくすぐったさを、私は感じていた。

「多分、初めて見た時から好きだったんだと思う。どうやって話し掛けようか、いつも伺ってたから。」

「そうなんだ・・。」

「でも彩美、何気にいつも誰かと一緒だからさ、一人になってる時間とかなくて、だからあの時たまたま自習室の外で一人だった彩美見て、今しかないって思ったんだ。」

「驚いたんだよ、私。」

「だろうね。顔に、この人誰?って出てたし。」

隼人はそう答えて、苦笑した。

「でも、だから、付き合えて嬉しかった。知れば知るほど、彩美のこと好きになった。本当に・・、あん時は、彩美依存症みたいになってたかもな。」

「嘘、そんなふうには見えなかったよ?」

実際、それは本音だった。隼人はいつも飄々としてた。予備校内では私にあまり、話し掛けないようにもしてたと思う。

「そうだったの。彩美が、他の男と話してんのとか、本当はすげーやだった。」

初めて聞く隼人の本音に、頬が緩む。

「笑うなよ。」

それに気付いて、隼人が少し顔をしかめた。

「だって、嬉しいんだもん。」

私は素直にそう答えた。

隼人がすき。

そんな気持ちが、もう自分の身一つだけでは足りなくて、溢れ出しそうだった。


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