イミテイション

駅前


約束の時間より10分ほど早く、待ち合わせ場所に着いてしまった。


夕方の駅前は、人が多くてうるさいからあまり好きじゃないんだけど…


あたしは雑音を消すために、MP3で音楽を聴きながら時間を潰していた。


「ごめん、お待たせ!」

駅に着いて5分くらい待った頃、
少しだけ息を切らせて岩崎が到着した。


「まだ遅刻の時間じゃないし。
それより…これからどうするの?」


イヤホンを外しながら、今日一日不思議に思っていたことを尋ねる。


「俺、実家から通ってるんだけど、今日親がいなくてさぁ。
一人で飯食うのもちょっと淋しいし…
今朝、調度いいタイミングでお前に会ったから一緒にどうかと思って。
それに…
さっき死にそうな顔してたから放っておけなかったんだよ」


そんなことを言われてしまったから、少しだけ鼓動が早くなった。


「…ありがと」


あたしがそう言うと、彼は満足そうに笑った。


こういう風に心配されたのって久しぶりかも。
そう思うと嬉しくて、自然にあたしも笑ってしまった。
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