さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

『ただいま。レイラ』


『お帰りなさい! お父さん、お姉ちゃん! みんな!!』


父と姉に飛びついて頬に口付けをする。


それが、少女レイラの毎度の儀式だった。


しかし--。


「レイラー!!」


いつもとは違い、姿が確認できないほどの距離から自分を呼ぶ声がする。

レイラは不思議に思い、耳をすませた。


他にも何かをしきりと訴えている声がするが、馬が地を蹴る音に邪魔されてよく聞こえない。


相当に距離があるのだ。


“レイラ”と呼ばれている事だって、自分の名前だからこそわかったことであって、

他人の名前だったなら、おそらく何を言っているかさっぱりわからなかったことだろう。


音の内容が、意味を成して理解できた時には、もう姉の姿はそこまで来ていた。


「逃げるのよ、レイラ!

急いで!!」




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