【短】偽りのチョコ
「すでに本宅に、段ボールで2箱になってますよ?」

助手席に座るスーツの男が、口を挟んできた

「あー、うぜえ」

勇汰が、かったるように呟いた

「チョコ嫌い?」

「違う。女が面倒なんだよ。興味ねえし」

勇汰が、肘をつくと、窓をじっと眺めた

「モテるんだ、あんた」

「嫉妬してんの?」

勇汰が、くるっと向きを返るとにこっと笑った

「馬鹿じゃないの?」

「馬鹿はイチゴだろ」

勇汰が、指先であたしの額を押した

「金欲しさに俺に引っかかるなって、馬鹿だな…ほんとにさ」

勇汰が優しく微笑むと、運転手に車を止めるように指示を出した

勇汰が、あたしの膝に万札の束を投げる

「帰れよ。次はもっとマシな男に、引っかかれよ」

あたしは車のドアノブに手をかけてから、勇汰に振り返った

もう…会えないなんて…言わないでよ

せっかく、あんたと知り合えたのに

「あんたの名前は?」

勇汰がにこっと笑うと「小山内 勇汰」と教えてくれた

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