特別保健委員会
声がした方角に目をやると、やはりというか何というか、宮城さんの姿があった。
サッカーボールを追いてすぐに戻ってきてくれたのか。


と、そんなことより。


「と、特別保健委員…?」


なんですかそれ、と先生に目で尋ねると、若干機嫌を損ねた表情で説明をしてくれた。
台詞を奪われたのが余程気に食わなかったのか、心なしかさっきよりも勢いが衰えた気がする。


「特別保健委員は、俺が作った委員会。俺が厳選した生徒で成り立つ、裏風紀委員みたいなもん。」
「泉ちゃん、それわかりにくい。」
「うるせーな、いいんだよ。」


良くないんだけど。
さっぱりわからないというオーラが伝わったのだろうか。

いつの間にか私の隣にきていた宮城さんが、説明補充をしてくれる。


「要するに、泉ちゃん──そこにいる泉ハルカ先生の独断で選ばれた生徒で成り立つ、トラブル防止のための委員会。」
「そーいうこと。この学校、流血沙汰多くてよー。保健室繁盛しすぎで面倒だったかんな。」


肩をすくめる先生を横目で見ながら、頭を整理する。
…つまりだ。


「保健室にくるような沙汰になる前に俺らでなんとかしちゃおうぜ、的な委員会ですか…?」
「ま、そんな感じかな。」


そんな委員会あるなんて知らなかったぞ。
というか保健委員って言ったら、白衣の天使とかがなるようなもので流血沙汰を防ぐとか血みどろと縁があっていいものじゃないだろ…!!

脳内は、ツッコミエンドレス。

それを察してくれたんだろうか。
宮城さんは、とりあえず、と呟いた。


「頭、怪我してないか確認してからな。…つーか泉ちゃん、仕事しろっつったのに、やっぱ放棄してただろ!」
「うるせーな!こいつがアホなこと言ったから反応しちまったんだ!」


え、私の所為!?


「つーか、頭やられてんなら早く言え。」


その言い方失礼じゃない!?

様々な文句が浮かんでは消え、浮かんでは消え。
目を回しているうちに、気がつけば頭に氷を乗せられていた。


「頭やられてるやつなんかな、冷やせばいいんだよ。」



今、保健医あるまじき台詞を聞いた気がしたけど。
残念ながら、既に突っ込む気力はなくなっていた。
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