闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~

「何故そこまで出来るんだ。 自分の命を投げ捨ててまで…… 」



ケイトはため息混じりに、少し困惑した表情を見せた。



「樹里に出会って、初めて知ったよ。 誰かを想うって、こんなに胸が苦しいんだな 」



そう私の肩を抱きながら、ルキアは頭をギュッと包み込んだ。


それだけで十分嬉しい。


その言葉が聞けただけで幸せ。



「2人を見てると、樹里ちゃんが言ってたこと、少し分かった気がするよ 」



ケイトが切なそうに私を見た。



「そんなに互いの事を……。私たちは魔物に体を奪われたと同時に、大切な心というものも失ってしまったのかもしれないな…… 」



エドマンドとケイトは顔を見合わせると、私たちに視線を落とした。



「ありがとう…… 」



私がルキアを想う気持ちは変わらないし、少しは伝わってたって思っていいんだよね。


ふっと体の力が抜けてく。


私、このまま死ぬんだ。


そっと濡れた彼の口が近付き、優しく唇が触れ合った。


命の水は樹里の唇に伝わり、一度止まった小さな鼓動が再び動き出した。


純血の戦士は息絶え、〝小嶺樹里〟という1人の少女の姿に戻った。


闇のヴァンパイアたちは滅び、魔界には平和の風が吹き注いだ。


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