SHINE and STAR
<空想世界>
オーバーモーションとでも言うくらい、大袈裟に腕を振る。

……いや、痛いから。
何度も何度も腕を振り続けたおかげで、筋肉が「いい加減にしろ」と騒いでいるみたいである。
まあ実際、こんなことをしても何の意味もない。むしろ落ち着いて集中した方が有効だったりするのだが。けど、悔しいのでやけくそになっているワケでもあるが。

ぶん、ぶん、と惨めな音が、それはもう聞き飽きるほど響き渡る。
もはや無駄な、つまらない努力を続けること数時間。
全く変化はない。どこか、バカにされているようで腹立たしい。

「あーーーー! ちくしょー!」

長ーい負け犬の遠吠えひとつ。
へいへい降参。俺の負け。
とにかくもう疲れたので地面に突っ伏す。……と言っても体はピンピンしてるし、心臓はいつも通りのリズムで鐘を鳴らしている。
でも腕が重いんだな、これが。それだけで全身の回路を遮断されちまう。とんだ厄介な枷である。

そもそもの原因といえば……これだ。

「はい」

ぽん、と手に渡されるモノ。
……頭が沈んで眠れない? ならコレを使うといい。今、巷で有名な『低反発枕』さ!

「ワオ、これで寝苦しい夜ともおさらばね────って、違うわっ!」

条件反射でばーん、と勢いよく叩きつけてみる! 枕は縮んで空気が抜け、ぐったりと大地に沈んでいくのであった。
……さすがだ低反発枕。
俺の暴走にも低反発という機能性の良さ。帰りに一つ買っていってやろう。

「あぁっ、安物だからってぞんざいに扱わないでっ! 唯一残った大人気商品なんだぞぉー! ちなみに定価398円」

「知るか。流れに関係ないモン持ってくんな。……それよか、お前いつの間に、」

ここにいたんだ? と言いかけてやめた。こいつのことだからきっと俺は疲れさせられる。間違いない。
と、それにいい枕もあることだし。ひと眠りするかなー。

「って、アレレ? 可愛い女の子を無視して寝る気? ひどいなぁ」

なんて言うくせにニカニカと笑っている。
だが俺の耳シャットダウン。
大体、自分のことを「可愛い」なんて言うヤツは相手にしたくない。


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