秘密の恋の始め方
変なおっさんに絡まれてた奏太をいつも通り助けようとした8才のあたしは、お
っさんに突き飛ばされて。
たぶんすごく運とかそう言うのも悪くて。
おでこを10針縫う怪我をした。
それは今も下ろした前髪の下に残っていて。
便利なんだかなんなんだか、奏太がピンチな時には痛むようになってるんだよね
。センサーかと突っ込みたいところだけど。
それでも、調子にのるなってお母さんにはしこたま怒られたものの、あたしは名誉の負傷だ
と信じてた。
………奏太の泣き顔と。
それ以来、強い顔しか見せてくれなくなった奏太の後ろ姿を眺めるに至るまで。
ずっと。