秘密の恋の始め方
「ど、どうしたの~? 奏太」
なんか知らないけど怒ってる。本能的に察知したあたしは猫なで声を出していた。
奏太はにっこり、笑みを深める。
「ちょっと話があるんだけど、いい? 2人っきりで」
「え~と………はい」
体が凍りそうな笑顔にあたしはひれ伏した。
無理だ、勝てるわけがない。
ズルイなんで2人だけ!? 俺は!? と喚いた高倉くんを奏太はエンジェルスマイルで黙れと一括して、(高倉くんはピシッと固まってた、ほんとにごめん)そのままずるずるとあたしを引きずったまま教室を出る。
(あああああああ、終る! あたしの平和が、日常がっ)
まだ結構な人数が残っていた教室からは悲鳴じみた歓声が沸き起こって。
引きずられながら振り向いたあたしの目に入ったのは、冗談抜きでムンクの叫びみたいな角度で顔を硬直させた隊長の姿だった。