一口雑話 覚え書き
はみ出した
◎◎ネタメモ◎
「コレ…なんだよ」
「ガトーショコラ」
「コッチは?」
「ココアフィナンシェ」
やめて、
「いっぱい作ったんだよ」
これ以上菓子を…
「…産廃を?」
「多分、食べれるよ」
菓子を冒涜すんなー!
「"たぶん"ってなんだー!」

俺の失敗した焼き過ぎガトーショコラを上回る、もはや消し炭。
フィナンシェ型の常識を覆す立体に、確定する生焼け。
「た、食べれたもん」
「お前が食べられるからって無事の確証はないわ!」
幼なじみだよ。味覚が明後日なのは把握済みだよ!
「もうちょっと料理音痴を自覚しろ!」
そして治せ!

「うっ」
え?
あれ?
泣いて…る?
「うるさいなぁ!
男のくせにお菓子作り得意なスミの方が変なんじゃん!!」
「お、男とか女とか、カンケーねぇだろ?得手不得手があって当たり前…」
「スミの方が女らしいとかクヤシーじゃんか!」
おい。
「人の話を…」
「負けないんだから!
絶対旨いって言わせてやるぅ!」
ガガン!と、ドアが有り得ない轟音で閉まる。

どうしてこうなった。

手の中にある手作り菓子が有り得ない甘焦げた臭いを振り撒いている。
「何、俺。これからこんなもの味見させられ続けるの?」
ってか、なに?
あいつわざわざ今日の日に菓子持って来たのに、なに宣戦布告して帰って行くの。
「いじった俺も悪いけどさー」
だって、どうして良いか分かんなかったしさ。
何でなのかも言わないし。

開いた方の手で髪をいじくっていることに気付く。迷っているときの俺の癖。

あぁ!チクショウ!

ガトーショコラをかじる。
「あー。もう。クソ苦ぇ」
こりゃあ水張り忘れやがったな。
平らげるとココアフィナンシェに取り掛かる。
予想通り生焼け。
「何でハート型にこだわんだよ」
しかもでけぇし。


よし!
決めた!
1ヶ月後に泣いて感動するほど激烈うめぇフランクフルタークランツ(アイツの好物)贈ってやらぁ!
そんで止めさせてやる!

「一生俺の菓子を感激しながら食ってれば良いんだバーカ」


それは冬の一番寒い頃の、だけれども妙に熱気のあるあの日のお話。
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