初恋の再会
春の風

集まりの場所

 彼女は静かな眼で、俺の頬を平手打ちした。


「…」


 いや、俺は別に…恋愛なんて興味ない訳だし。



◆-◇-◆


「――ぉいっ!」

 気持ちいい眠り。それを邪魔する声が…大きく聞こえてきた。

「…ん…」
 瞼を開けると、一真の顔がうつし出された。
「ったく、早く起きろっつーの! 遅刻するって! 置いていくぞ!?」
「は…、遅刻!??」
 俺はそう言うと飛び上がった。
「早く起きない棗が悪いんだろっ」
 一真は、右手に時計を俺に見せた。
「8時かよ…」
 彼は、高校1年生の『二階堂 棗』。起きるのが遅いと、「一真」のモーニングコールで起こされる。
 『石井 一真』は、棗の友人である。

「よしっ支度完了! 一真、行くか…って、…何ニヤけてんの?」
「いや…、ゴメン棗。本当は8時じゃないんだよね。7時だよ」
「はい?」
 本当は8時じゃない…だと?
「だってギリギリ間に合うのってなんか飽きたからさぁ、余裕な時間に行きたかったんだよねっ」
一真は舌を出して笑った。
「…騙したのか」

 でもまぁ…遅刻にならなくてよかったけど…。




「また別れちゃったの?」
 学校に着くと、一真がさっそく昨日の「話題」に入った。
「んー? まぁね。別に好きじゃなかったし」
「もー。だったら最初から付き合わなければよかったのに。だからビンタされるんだよ!」
「…はいはい」
 教室に入ると、何人かの奴等に挨拶を交わす。
「でも、棗はモテモテでいいよなぁ」
「…モテねぇし」
「俺も早く彼女ほしいなぁ」
 そんな一真を、呆れた顔で見る棗。
「あ、二階堂! また別れたって本当なのー?」
 ボーっとしていた視界に、いきなり出てきた人物。
「あー…? あぁ、うん。まぁ…」

 『白石 風音』高校に入って知り合った。セミロングで、そこらへんに居る「女の子」と変わりない。
「酷いなぁ。女の子にはちゃんと優しくないとダメだよ」
と、白石は俺の眉間に指を寄せた。

「そうそう! ほらぁ、白石も言ってんぞー? 棗って酷い奴だよなぁ」
「…酷い奴で結構」


 "恋愛"って、一体なんなんだ?
 恋って楽しいのか?
 自分の思い通りにはいかないだろう。
 


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