ハケンSORRY!
第七章
狭い倉庫のような部屋の一室のデスクの上には大量のビデオテープが積まれている。
やれやれ、なんだか埃っぽく、空気が悪い。

「全部総理の国会答弁とぶら下がりのテープです。」
「これ…、全部観るんですか。」
「あと、これは総理の著書です。」
「“日本を変えろ”ね…。」
「まあ、所詮ゴーストライターが書いたんでしょう。」


ビデオテープの数はあまりにも大量で、なんとなくぼんやり、総理の仕草や癖をチェックする。

「もう一杯コーヒーでも飲みますか。」

灰皿には吸殻が溢れんばかりになっている。


「へぇ、今こんなんなってるの?」
ハローワークを視察する総理のニュース映像。
総理の東田は普段職員が応対する相談カウンターに座り、職を求めてきた若い男性に語りかける。
「やりたいことを言わないと。そうじゃないと相談されるほうも困っちゃうよ。」
ニュース映像は職安前の30代前半らしき女性の街頭インタビューに続いていた。
「今の時代、仕事なんて選べないです。一日一日を精一杯生きるだけで。」



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