大切な人へ
それからしばらく教室に居ると

「奈菜子??」

誰かから声を掛けられた。
振り返ると

「大倉くん…??」

大倉くんが居た。
私が不思議そうな顔で大倉くんを見つめていると大倉くんは

「やっぱり此処に居た。おばさんに聞いたら『どっか行った。』って言うから、もしかしたらと思ってさ。」

と付け加えた。
私に何の用だろう??と疑問に思っていると大倉くんが

「喜一からの手紙。ずっと…渡せなくてごめんな??」

一通の手紙を差し出しながらそう言った。

喜一の字だ…。

久しぶりに見た喜一の字は相変わらず躍ってるみたいだった。

「…プッ。きたない字…。」

思わず声に出すと

「奈菜子の笑った顔久しぶりに見た。やっぱ奈菜子はそっちの方がいいな。」

と大倉くんに言われた。
『笑った顔久しぶりに見た』ってことは相当私、笑ってなかったんだな…。
私はちょっと反省した。

「じゃあ、俺帰る。またな、奈菜子。」

大倉くんはそう言って教室を出た。
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