Blood†Tear

　「大丈夫か、コウガ？」


座り込む彼に歩み寄ると、顔色を伺う。

だが、彼は俯いている為その表情を伺う事はできない。




どうした物かと頭を掻いていると、




　「…あいつが……」


俯いたまま低い声でぼそりと呟く。



　「あいつがアリアを……アリアを殺した…！」



地につけた拳は草を握り締め、体は小刻みに震えていた…


怒りを露わにするコウガ…



そんな彼を見つめる事しかできないレオン…



何と声を掛けたらいいか戸惑っていると、コウガは無言で立ち上がりどこかへ歩きだす…





　「おい、どこ行くんだ？」


呼び止めると、一度立ち止まり振り向く。



振り向いたその瞳は虚ろで、光がない…

誰も寄せ付けない殺気だった雰囲気…

優しい筈の彼は、別人のように変わっていた…






　「…あいつを追う……」



低い声でそう言うと、再び歩き出す。




虚ろな瞳を目にしたレオンは、心配そうに眉を潜め何か考えるように口をへの字にさせる。


そして乱暴に頭を掻くとコウガの元へ走り出した。







　「俺も一緒に行く」


コウガの横に並ぶとそう言い、足並みを揃えて歩く。


レオンの言葉にコウガは疑問符を浮かべると、レオンは言葉を続ける。





　「いつまでも此処にいたって何も解決しねぇし。この際、お前と旅でもしようかってさ」



腕を頭の後ろに組んで言うと、笑って見せる。






　「嫌とは言わせねぇぞ」


　「…あぁ、よろしく」



微笑み合い握手を交わす２人。


今のコウガは、優しい雰囲気を醸し出し、出会った頃の彼に戻っていた。








新緑が風に揺れ、サラサラと音を奏で、キラキラと木漏れ日が輝く。


どこからか現れた動物達が、２人の無事を祈り見送った。


動物達の祈りを背に、２人はこの森を後にする。