Blood†Tear

 「妖刀に手を伸ばし現実から逃げ出したのは私自信。それ相応の責任をとる覚悟はできています……」


顔を伏せ反省したように言う彼女。

その姿に彼は頭をかくと優しく微笑んだ。




 「1人で全てを抱え込む必要はありません。人は誰しも、道を踏み違えるものです。貴女は、行く先の見えない暗闇に迷い込んだだけ。其処から抜け出す事のできた今の貴女なら、まだやり直す事ができる筈です」


 「巫女としては、もうやり直す事はできません……」


 「確かに、巫女としてやり直す事はできないかもしれませんが、貴女を認めてくれる人は必ず居る筈です。貴女の刀の実力は素晴らしい。それを活かせばきっと、貴女の居場所は直ぐに見つかりますよ」


微笑みながら優しい言葉をくれる彼を眩しそうに見つめると、彼女は悲しそうに妖刀へと目を落とした。




 「その二口の刀は、貴女に心を許し慕っています。手放す必要などありません。貴女なら彼女達を正しい道へと導く事ができる筈。もう二度と人の道にそれる事なく、この刀と共に新たな道を歩んで下さい」


地に転がる二口の妖刀を手に取り彼女に手渡した。


彼女は戸惑いを見せたが、それを受け取ると大事そうに抱え込んだ。




 「貴方が居場所を見つけるまで手を貸すべきなのですが……」


 「私なら心配いりません。それよりも早く、貴方の大切な方を救いに行って下さい」


彼女は微笑みそう言うと、地に膝を付き正座をした。




 「正しき導き感謝します。貴方の無事を祈って……それでは、また何時かお会いできる日まで……」


両手を膝の前に付き深々と頭を下げる。

鈴のついた簪が揺れその音が鳴り響く。

その音が鳴り止むと共に彼女の姿は其処から消えた。




 「くっ…ゲホッゲホッ……っ……」


遠退く鈴の音に耳を済ませ彼女を見送ったジークは苦しそうに咳き込み血を吐いた。




 「…シェイラ…無事で居て、下さい……」


口元の血を拭い、ふらふらと覚束無い足取りで町の中へと姿を消した。




町の何処かで鈴の音が鳴り響く。

それは少女達が楽しそうに笑い合っているような、そんな響きを持つものだった。





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