Blood†Tear

変わり映えの無い青い空。
争いが繰り広げられた町中とは打って変わり、其処は長閑な時が流れていた。



無事宿へとたどり着いたレグル。

彼は入り口付近に座り込むクレアを発見し歩み寄る。




 「おい、しっかりしろ」


 「……」


全身血塗れで眠るように瞳を閉じる彼女。

確実に危険な状態であると判断し、肩に手を添え軽く揺すり頬を叩く。


すると彼女はゆっくりと瞳を開け、ぼやける視界をレグルへと向けるが、彼を瞳に映すと再び目を閉じた。




 「おいクレア……」


重症の様子だが、微かに意識はあるようだ。


一旦部屋まで運びそれから処置をするのが適切だと、彼女を抱える為手を伸ばすが、何かに気づき振り返る。




 「…酷い怪我ですね……直ぐに治癒します」


レグルの隣に膝を折り、クレアの様態を確認したのはシェイラ。


彼女は難しい顔をしながらも、両手をクレアへとかざし治癒の力を駆使する。




 「この怪我でまだ生きていると言うのが不思議ですね。流石死神と言った所でしょうか」


腕を組みその様子を見守るジークは言葉を漏らす。


彼の服は血で染まっているが、既に傷は完治している様子。

シェイラにより治癒を施されたのだろう。




 「…これで大丈夫です」


暫くしてクレアの治療は終了した。


未だ目を開ける事無く眠り続けるが、大分顔色も良くなり痛みに顔を歪める事も無い。


次いでシェイラはレグルと向き合い彼の腹部へと手をかざす。


彼の傷も治癒しようとするが、彼は伸ばされた彼女の腕を掴む。




 「無理をするな。俺は問題無いから」


優しく声をかけ制止する。

彼女にその力を使わせたくないから。
これ以上、彼女が何かを失うのは嫌だから。


しかし、彼女は首を横に振り柔らかく微笑んだ。




 「私なら大丈夫です。ですから、治療させて下さい。貴方の力になりたいのです」


そう言う彼女の腕は彼の手から離れて行く。

まるでその手から逃がれ、触れる事を許されぬもののように。





< 283 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop