架鶴帆越しに前に向き直ると境内の方から小さい子供が走ってきている。


「李紅(リク)か」


色の白い見た目5歳くらいの小さな少年。
そのなかで唯一、異彩を放っているのが赤く輝く2つの瞳。


「吟珥!!人間に手を出すなんて何事です………か?」


少女を目の前にして固まる李紅。


「か……架鶴帆さま?」

「え?……えっと〜」


困ったように慌てだす架鶴帆。


「お久しぶりです!!覚えてらっしゃいますか!?李紅です!!昔、架鶴帆さまに拾って頂いた兎です!!」


嬉しそうに話しかける李紅はそのままの勢いで架鶴帆に抱き着いてきた。


「ちょっ!?え?な…何!?」


そう、李紅は架鶴帆が山で捕まえてきた小さな兎だ。

そして、この桜の木は500年前に架鶴帆と出会った桜の木。
俺が500年眠っている間に李紅はこの桜の木の元に動かず、ずっといたのだ。




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