架鶴帆


「……架鶴帆」


膝の上で兎が丸くなっている。
そっと撫でてやるとピョコンと耳を動かした。


「明日も来るかな?」












あれから5日、架鶴帆は姿を見せていない。


「どぉしたんだろうな?」


架鶴帆がいないので最近の話し相手は専ら兎になっていた。

不思議なことにこの兎は逃げ出すこともせず、おとなしく吟珥に寄り添っている。


「……ちょっと里に下りてみるか」


兎を抱き上げ立ち上がる。


「もぉ暗くなるから人はいないだろ」


たとえ他の人には姿が見えないといってもやっぱりこの姿は派手で自分で気になる。


吟珥は兎と里に向かって歩きだす。




「もうすぐ新月か」


夜空を見上げると輝く月が足元を照らしていた。






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