もてまん

目の下には、舞の胸の谷間がくっきり見える。



(この状況でバージンの話は酷だろ?

舞、俺だって男だぜ……)



繁徳は手を伸ばしたい欲望を必死にこらえていた。


「でも、今は二人とも浪人生だからね。

あたしのバージンは、シゲが大学受かったらってことで、

お・あ・ず・け」


繁徳の鼻の頭を、人差し指でチョンとつつくと、舞が嬉しそうに笑った。



(おあずけ、って……)


確かに、今がその時ではないことは繁徳にも納得できた。

繁徳は自分に自信がなかったし、舞の気持ちを知った今も、その気持ちを受け止める勇気がまだ湧いてこない。


「今までだって、見てるだけで、十分幸せだったんだ。

こうして舞といるだけで、俺は十分満足だよ」


繁徳は、今の自分の気持ちを正直に告げた。


「シゲって、ほんとシゲだね」



(どういう意味だよ、舞。気弱な俺にがっかりってことか?)



繁徳を見つめる舞の目は繁徳を大きく包み込むように、暖かく、満足気だった。

繁徳はその言葉の意味を考える。



(違うな……俺はこのままの俺でいい、ってことかな?)



繁徳の中に暖かい気持ちがこみ上げてくる。
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