もてまん


走ることは気持ちが良い。


繁徳は勢いついて代々木公園まで足を伸ばした。

初日にしては距離を走り過ぎたか、と少しの反省が頭をよぎったが、舞の姿を彼の頭からかき消すにはこれ位の距離と時間が必要だった。

息が上がって、公園のベンチで一休みする。

水道で頭から水をかけた。

首からしたたる水が足元に溜まる。

繁徳は、熱く湧き上がる舞への想いを、自分でもどうして良いかわからずにいた。

だが、漠然とではあるが、この逸る想いを押し留めることが今の自分には必要なことだと感じられたのだ。

今まで目標もなくダラダラと過ごしてきた毎日が、舞への気持ちに置き換えられることに違和感を覚えた。


(俺の今するべきことは、舞を抱くことじゃない)


繁徳は舞を守れる男になりたいと思った。

その為には、自分に自身をつけることが必要だと強く思った。

繁徳は、舞が瞳の奥に映す、舞に相応しい自分の姿を見極めたいと思う。


(強くなりたい)


繁徳は心の中に決意を強く唱え、疲れた身体に鞭打ち、今来た道を家路へと引き返した。
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