もてまん

「お腹減ったから、マックでもって。

でも一人じゃ心細いから、誰かいないかなぁって覗きにきたのよ」


佐藤はそう言うと、マジマジと二人の顔を交互に見た。


「あたしも、さっきそこでシゲに会ってさ。

お腹減ったから、無理やり付き合わせちゃった。

ね、シゲ」

「あぁ、まあな」


繁徳が、さも、たいくつそうにぼそっと呟いた。


「なあんだ、デートかと思っちゃったよ」

「まさかぁ、日曜のお昼にマックでデートなんて、ださくない?」

「それもそうだね」

「あたし時間あるから、食事付き合うよ」


舞が佐藤に言った。


「じゃあ、下で買ってくる」


サトチンは納得した様子で階下に下りて行った。



「危なかったね」



その背中を見送りながら、舞が繁徳を見て小さく呟いた。


「ここは地元だからな。これからは気を付けよう。

じゃぁ、俺は先に帰るよ。

何かあったら電話してくれよ、俺ん家は大丈夫だから」


繁徳は一瞬、自分の手を舞の手に重ねて、その手をそっと握った。


「うん、ありがとシゲ。じゃぁね」


舞の顔に赤みが戻る。


帰り際、階段でサトチンとすれ違った。


「なんだ、黒澤くん帰るの?」

「北島いるからいいだろ」

「付き合い悪いね」

「バァイ、俺忙しいから」


繁徳はぶっきらぼうにそう言うと、そのまま真っ直ぐ出口に向かった。
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