もてまん



「シャンソン歌手なんですか?」


繁徳は思ったことを素直に口にした。


「そうだよ、一応ね。

駅前の店で金曜の夜だけ、特別歌ってるのさ」


その時、ふうっと、外からの空気が店内に吹き込んだ。

千鶴子は人の気配を感じて、サングラスを深くかけなおす。


「先にすまんな……」


昼休憩から店長が戻ってきたのだ。


繁徳は一瞬ドキリとした。

別に悪いことをしている訳ではないのに、悟られてはいけないと身構える。

繁徳は受け取った名刺を胸ポケットに気づかれないようさっとしまうと、何気なくバーコードリーダーをカウンター上のDVDに当てた。
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