ドーンッッッ!!
「でも…!!けどさ!」
アイユが!
そう叫びかけた時、土埃と闇で、見えている部分が腕しかなかった標的が
ガラリと大きな音を立てながらコンクリートを乗り越え、こちらに向かって歩き出した事に気づく。
ガンノードが歩く度、瓦礫の崩れる音と、ギジッ という何とも言えない耳障りな音が聞こえた。
まだ姿は見えず、闇の中で一つの赤い光だけが存在感を放っている。
と、急に立ち止まるガンノード。
キュイン。
機械音と共に、赤い光がアイユを捉えたかと思うと
張り付けていた華奢な体を掴み、反対側の壁に叩きつけた。
暗闇の中で 枝が折れる様な音を聞いた。
「アイユゥゥゥぅううううううう!!!!!!」
叫ぶ俺の横で、ルナが攻撃魔法をかけようと、魔法陣を浮かび上がらせる。
「ああああぁぁぁああ!!!」
ルナは我を失った様に叫びながら、大きな目いっぱいに涙を浮かべて、
青い魔法陣から火の様な赤い光を放つ。
だが、ガンノードの反応も速かった。
ルナよりも数倍大きい魔法陣を作り、赤い光をいとも簡単にはじいたのだ。
バシュンッ
大きな音で消えた光が最後に照らしたのは
奇妙な方向に曲がったアイユの足と
今まで見た事のない位、無機質で 空っぽな
一つ目の女性の姿だった。