木霊の四辻
「あげるわ」

と、ゆいはゆっくり、紙切れを下へおろす。彼女の手へ渡す。ソフトボール部だったとは信じられない、やつれ細った指だった。

嘆かわしく思いながら、ゆいは言う。

「落ち着いて。護符よ。アナタを呪いから守ってくれる。持ってなさい」

「あ、ぁ、あぁ……あ……」

八木麻衣子はまるで、施しを受けたように護符を胸に抱いた。自分の腹に頭をぬめり込ませるように体を折り、うめいた。泣いているのだ。なにに、どういう感情で泣いているのかまでは、どうでもいい。

まったく、嘆かわしかった。存在不確かな木霊の呪いで、快活な少女がこんな風になってしまうのだ。

それ以上見ていられなかったゆいは、そっと、ベッドから出た。静かにカーテンを閉め、今野佐紀へ向く。

歩み寄り、少し屈んだ。そして、八木麻衣子に渡したものと同じ紙切れを、今野佐紀にも見せる。

「アナタも、持ってる?」

「……これ、って……」

「お守りよ。護符。聞こえたでしょ?」

「呪いから守ってくれるの?」

「そんなとこ。要らない?」

「いっ、要るわっ!」

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