木霊の四辻





108号室の相田芽衣は、弓道部に所属している。

寮の外から部屋の位置を確認した時には、108号室はカーテンが閉められていた。恐らく、八木麻衣子同様にノイローゼに陥っている可能性が高い。

相田芽衣のルームメイト・小沢恵子は隣のクラスで、確か、料理研究部に所属している。彼女はまだ部活だろう。小沢が木霊の呪いに曝されている情報はない。八木の部屋を訊ねた時のように、都合よくルームメイトが帰ってはこないだろう。

八木麻衣子と同じなら、相田芽衣も居留守を使うかもしれない。

部屋のドアには、当然だが鍵がかかっている。インターホンにもノックにも、やはり応えない。中に、だれかがいる気配はあるにもかかわらず。やはり居留守か。燈哉のようなピッキング技術はない。が、考えはあった。

ケータイを取り出して電話をかける。学生寮の電話番号は共通されており、電話番号の下桁に学年、部屋番号を入力すれば、それぞれの部屋の固定電話にかかるのだ。

もっとも、相田芽衣が電話に出るはずがない。数コールして、留守電に繋がった。

ゆいは言う。
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