木霊の四辻
話を聞いてもらったからか、相田は比較的喋れるようになっていた。もっとも、その手にしているコーヒーカップは、小刻みに震えていたが。

「瀬戸岡亜美さん……相田さんのとこにも来てるの?」

「え……? 来てるけど。どうして?」

「ううん、別に」

「……瀬戸岡さんも、なの?」

「……ううん、別に」

「嘘よっ!」

「……」

どうしたものか、相田芽衣の疑心暗鬼はひどいものだった。恐らく、最初に言った言葉はすべて嘘になり、あとから上乗せされた言葉が真実と聞こえるのだろう。

「ええ、そうよ。瀬戸岡さんも木霊に関係してる」

白状してみせると、相田は「ほら見なさい」と言わんばかりに、しかしどこかひきつった笑みを浮かべた。そして手元のコーヒーに目を落とす。

「でもなんでよ……瀬戸岡さん、とても優しいのに……私、瀬戸岡さんがいなきゃ、きっと頭おかしくなってたのに……」

「……」

「どうして瀬戸岡さんまで……? なんでよ……ねぇどうして?」

「わからない」と言ったらまた、「嘘!」と跳ね返されるに違いない。スムーズに情報を聞き出すには、相手の会話の呼吸を読むのも手段だった。

あえて、持論を述べておく。
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