木霊の四辻
テストを作る教師が休んでしまっていてはテストがなくなる――というのも安易な話だが、燈哉は昔から楽観主義なのである。

「それで、その木霊のことをどうして、私に話すのよ」

理由などわかっているが、あまり乗り気ではないのであえて訊ねる。

すると燈哉は、高下駄が転がるように笑った。

「はっはははっ、おいおい、そりゃないぜ、ゆい。俺がこういう話を持ってくるのは、学校長のお達しだってわかってるだろ?」

「たまに、そうじゃないこともあるでしょ」

「まあな。でも今回は学校長のお達しだ――陰陽師さん? ご本山の言葉は絶対だぜ?」

「はあっ。やんなっちゃう」

「そう言うなよ。俺だってやんなっちゃう」

言葉尻をわざと真似したのは、木霊の話をしていたからか。

なんにせよ、

「とにかく燈哉、私のことは陰陽師なんて呼ばないで。その呼称、古臭い胡散臭い嘘臭いで嫌いなの」

「ほぉ、じゃあなんて呼びゃあいい?」

ゆいは立ち上がって胸を張った。

「桜木学園特殊風紀委員。それが私の役職よ。まかり間違っても陰陽師ではないわ。そんな非科学、矯正してやる」





< 8 / 94 >

この作品をシェア

pagetop