Call My Name
「ワンルームだからさ…そんなに広くねえけど。まあ、適当にくつろいでて。すぐに温かい飲み物をいれるから。あっ、布団に包まってろ。身体、すげえ冷たいんだろ」

「え…あ、うん」

俺はキッチンに立つと、ヤカンに水を入れて火をかけた

コップを二つ用意して、インスタントのコーヒーの準備をする

振り返るとガタガタを身体をふるわせているのに、ちょこんと部屋の隅に座っているスイレンが目に入った

「だから、ベッドの中に入れって」

「う…うん」

返事をするのに、スイレンは動こうとしなかった

俺はベッドから羽毛布団と毛布をとると、スイレンの身体を覆うように巻き付けた

「今、エアコンをつけるから」

テーブルの上にあるリモコンを手に取ると、暖房を入れた

「ご、ごめん」

「寒いんだろ?」

「ん、少し」

「部屋ん中にいるんだから、温かくしてろって」

俺はキッチンに戻る

ヤカンの前に立つと、『ピー』と笛が鳴るのを待った

「あの…すぐに帰るから」

スイレンがガサゴソと何かを漁りながら、口を開いてきた

すぐに帰るなんて、言うなよ

俺はスイレンとずっと居たいよ…なんて我儘か

諦めるって思ってるのに、やっぱ駄目だな

スイレンが好きで、諦めるなんてできねえよ

こんなに近くに居るのに、我慢なんてできねえよ、俺には……
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