Call My Name
『ところでこの前、父さんに呼ばれたのは何だったの? 景、すぐに帰ったから聞けなくて』

「親父はなんて言ってた?」

『言葉を濁すだけで、何も』

「そうか。見合いだよ、見合い」

『え?』

兄貴の声のトーンが下がった

『だって、景はスイレンちゃんと…』

「付き合ってるよ。だけど、親父に言われた時は、スイレンと付き合う気はなかったときだったから」

『見合い…するの?』

「どうかな? 親父次第じゃねえの? 俺はするつもりないけど」

俺は目のはしに映ったゴミ箱を見た

まだ見合い写真が、突き刺さったままになっている

ちらっとしか見てないけど、まあ、それなりに可愛い女の子だった

「兄貴、気にすんなって。親父は俺が説得するし…」

『ごめん』

「だから、兄貴が謝ることじゃねえって。親父も後継者を残したいだけだろうし」

『でも…』

「気にするな。俺はスイレンが好きだし、スイレン以外とは…もう、な」

『景…』

「兄貴、兄貴は教師になるのが夢だったんだろ? 夢を掴んだんだから、もう家のことを気にすんなって」

『ごめん』

兄貴の申し訳なさそうな声が俺の胸に突き刺さった

兄貴はいろいろと考えすぎなんだよ

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