ケータイ小説ストーカー

萌絵は花音の書き込みを読み、携帯電話のボタンを押していた指が止まった。そして、携帯電話の画面に萌絵の涙がポツポツと落ちた。


自分に許される全ての空き時間を花音の為に使い、反感を買う覚悟で反対勢力を叩き、専用サイトまで作ってファンを束ねてひたすら尽くしてきた。

にも関わらず、傍観者の様に素知らぬ顔を通してきた栞を、花音は選んだのだ。

悔しくて…いや、それよりも悲しくて、萌絵は涙を止める事が出来なかった。


しかし、花音の言葉により居場所を失った萌絵に、呆然としている時間は無かった。

涙を服の袖で拭い、滲む携帯電話の画面を見詰めながら、震える指を無理矢理動かした。

ケータイ小説文庫のサイトを退会し、そのまま花音ファンサイトの管理画面に移動すると閉鎖した。


そして萌絵は携帯電話を握り締めたまま、ベッドに俯せになって声を圧し殺して泣いた――


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