マジック・エンジェルほたる

「ねぇ、いこうよ個展っ!」
「ーこてんっていうと古い話しの…?」
「まぁ、いいからいいから!」由香は蛍の二度目のギャグをさえぎるように言うと、続けて、「さぁ、早く行きましょうよ!」
 と、元気よく、蛍とあや、良子、奈美にいった。ちなみに、ここは学校の教室だ。そして、もう下校の時間である。
 赤井宝林こと、由香のパパの個展開催の日になっていた。もう、金曜日だ。
 こうして、お馬鹿さんと仲間たちは、教室を抜けて廊下をかっ歩して出した。…すると、 あの「可愛らしくておとなしい文学美少女」こと黒野有紀が、そんな五人とすれ違った。有紀はいつものようにうつ向き加減で、肌は病人のように青白い。しかし、可憐でもある。「お友達がひとりもいないのよ」という噂はじつは本当であって、秀才の美少女「黒野有紀」はいつも孤独だった。誰とも話せない。ダイアローグ(対話)ができない。いや、したくっても「お友達」がいない。
 そんな影響だろうか?有紀の可愛らしい大きなおとなしそうな瞳の置くにはどこか「影」がある。ちいさな淡い桃色の唇は「暗さ」をあらわしているかのように、少しだけキュと閉じている。
 彼女は「お勉強が出来る」「可愛らしい」そして「やさしい性格」……それだけの女の子なのかも知れない。それはそれで素晴らしいのだけれど、自分自身でパフォーマンスできない、もしくは表現できない…という性格はマイナス面が多すぎる。
 誰だって「神」じゃないから、話しをしたり何かを見たりしなければ「そのひとの良さ」などわからないものだ。だから…黒野有紀という少女は他人からは「頭はいいかもしんないけど、なんかあの子暗いのよね。一緒にいるのも嫌って感じよね」といつも思われるのである。
 でも、蛍や由香は違った。彼女らは、
「あ。あのぉ、有紀ちゃん」
 と、少し遠慮気味ではあるけれど、ふりかえって、有紀の後ろ姿にそう声をかけた。
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