トリゴニコス・ミソス
太陽はしばらく考え込んでいたが、美名の願いを断ることなどできないことは良くわかっていた。

「……わかった。行くよ。でも、屋敷の中に入ったら絶対に俺の側から離れるんじゃないぞ」

いつもはからかってばかりで、美名のことを子供扱いする太陽が、そのときばかりは真剣な顔をしていたので、美名はおとなしくうなずくことしかできなかった。

「う…ん。わかった」

不安そうにうなずく美名を見て、太陽はいつもの明るい笑顔に戻った。

「美名は、目を離すとすぐどっか行っちゃって迷子になるからな」

「ひどーい。太陽、わざと脅かすためにそんなこと言ったんでしょう。もう、太陽なんて知らない!」

「あはは。そんなに怒るなって。でも、俺から離れるなって言うのは本当だからな」

そういいながら、太陽は美名の頭を優しくポンポンとたたいた。

美名は太陽にそうされるのが好きだったので、すぐに機嫌をなおし二人はそのまま連れ立って帰路についた。
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