【短】俺の、友人
俺は苦笑すると、肩を竦めた

「クッキーを焼いておきましたよ、勇人さん」

「ああ、サンキュ」

俺は桃香の頭を撫でると、額にキスをした

俺らの前を、越智先生によくに若い男子が通り過ぎていった

大きな旅行鞄を肩からかけて、意を決したような瞳で前を見つめて歩いている

俺は、その男子の背中を見送った

頑張れよ、若者

母親がどうした…気にすんな

俺は心の中で、越智先生の息子にエールを送った

「桃香は…子供が生まれてもそのままでいてくれよ」

俺は、昨日のヒステリックな越智先生の奥さんを思い出した

桃香は、ああなるんだろうか

俺は桃香に怒鳴られるようになるのだろうか?

「え?」

意味がわからない顔をしている桃香が、不思議そうな顔をして首を横に倒す

「いや、何でもねえよ」

俺は桃香に微笑むと、廊下から見える窓に目をやった


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