ラバーズキス
‥* 電話 *‥
みんなと会ってからしばらくして、知らない番号からの着信があった。何度もかかってきていたので、あたしはでることにした。
「…はい」
「あ、俺」
短く言った声は聞き覚えのある声だったけれど、あまりに短くて誰だかわからなかった。
「わかる?」
やっぱり短くてわからなかった。
「わからないです…」
「冷たいな~」
「あ…」
アツシだ。
でも、なんでアツシがあたしに電話してきたの?なんで番号知ってるの?
あたしはドキドキして、顔が熱くなった。
「俺は“あ”じゃないんだけど」
アツシの名前を呼んだことがなくて、今までもどう呼んでいいのか迷っていた。大哉やエミナは呼び捨てしてるけど、あたしはほとんど会ったことないし、友達の和希くんには“くん“付いてるし…
「マジでわからない?」
あたしがこんなことで悩んでいることを知らないアツシは困ったように聞いてきた。そして、
「アツシだけど」
と続けた。

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