ラバーズキス
‥* はじまり *‥
「あした、わかってるな」
電話のむこうのアツシが言った。今日はもう何度目だろう。
「わかってるってば。和希くんが迎えに来てくれるんでしょ」
「俺は仕事で先に向こうに行ってるから」
「うん。ちゃんとみんなで行くよ」
「おまえは家で待ってたら和希が行くから」
「わかったって!」
アツシがこんなに心配性だと知ったのも、電話で話すようになったあの日からだった。あたしとアツシがこうして連絡をとっていたことをエミナはとても驚いていた。
「あのアツシと電話してたなんてね~」
和希くんが運転する車の後ろの席でエミナは言った。
「別に隠してたわけじゃないんだよ」
「いいのいいの。アツシのこと怖がらないで話すのはりんだけだって和希くんが言ってた」
「怖がる?」
アツシの見た目は確かにいかつい。気に入らないという理由でケンカをすると聞いたこともあった。
「りんちゃん、アツシに元カノと別れた理由聞いたでしょ?アツシが、俺のこと怖がらないのはりんだけだって言ってた」
和希が言った。
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