超短編 『当選』
当選者となるとまず最初にしなければならないのが、宣誓だ。

『私は当選者としてこの当選を辞退することなく、当選者としての使命を最期まで果たします』

そう誓う事が必要だった。

万が一にも辞退することはないが、もし辞退をすると大変なことになる。

辞退者として一生を隠れてこそこそ生きるしかなくなるのだ。
どこへ行っても辞退者として、誰も相手にしてくれなくなる。

もちろん会社もクビになってしまう。


最期までいうところがポイントでもある。

最後ではなく最期と言葉の意味は、寿命が尽きるまでという事で、一度当選すると一生当選者でいられるのだ。

当選者になるとすぐに、特別取材班が編成され、そして専任のボディガードが3人ついて私の身の危険を守ってくれる。

そうなると私の行動は公けのものとなり、テレビによって逐一放送され、どこへ行っても歓迎されるようになる。

買い物をしても大幅な割引になるし、食事をしても無料サービスメニューが出てくる。

街を歩けば、多くの人々から声援や握手、中にはサインを求めてくる人もいる。

当選者であれば当たり前のことなのだが、ちやほやされることはうれしいものだ。
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