とろけるチョコをあなたに
 正直、一度や二度でマスターできるほど簡単ではないのだが、意気込みというのは重要である。

 予習を促した甲斐もあり、チョコを直火にかけて変質させるという真似はもうやらなくなった。

 微細な温度調節にはやはり四苦八苦していたが、これをあっさりクリアされてもオレの立つ瀬がない。

 オレも直接手伝い、何度か繰り返してようやく満足のいくものができた。多少時間はかかったが、スタートがレンジ爆発と鍋丸焦がしだということを考えたら、たった二日でよくここまで成長したものだ。

 前日に作ったブランデーボンボンにテンパリングをしたチョコレートをコーティングして、完成。完璧なブランデーボンボンチョコが出来上がった。

 後はラッピングして当日に渡すだけ。

 絵理は出来上がったチョコレートを不思議そうに眺めていた。オレに手伝ってもらったとはいえ、自分で作ったという事実がまだ信じられないらしい。

「せっかくだし、味見してみるか?」

「……いいのか?」

「いいも何も、渡す前にちゃんと味見は必要だろ」

 オレは苦笑して完成したばかりのチョコを一つ絵理に手渡した。
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