とろけるチョコをあなたに
 余ってたからなんてただの口実だ。元々オレはお前にありったけの想いを込めたチョコを贈るつもりだったから。

「……だが、私からあげるものがない。あれを作るだけで精一杯だった。……すまない」

 申し訳なさそうに俯く絵理を見て、オレは思わず苦笑した。二人で一緒にチョコを作ったら、もう貰えるとか貰えないとか、そんな事どうでもよくなってしまっていた。

「前倒しで貰ったから気にするな。味見の時にお前に食わせてもらったチョコ、美味かったぞ。残されても困るし、遠慮すんな」

 それでもまだ絵理は納得できないようで、しばし考え込んでいた。

「そういうわけにもいくまい。……ではせめて、これを二人で食べよう」

 そう言って絵理はケーキを切り分けたが、皿もフォークも一つしかない。

「いや、気にしなくていいさ。皿とフォーク持ってくるの面倒だしな」

「全く……仕方のない奴だ」
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